「遺体は見つかりましたが、腐敗がひどく本人かは確認できませんでした。すいません。」
「そ、そうですか。でも、でもなぜあの子なのです?あの子は、あの子はまだ、生まれて4年しか経っていないのに。世界を見せてあげたかった・・・・」
「残念ながら、犯人は見つかっていません。」
小さな男の子は、無垢な表情でお母さんに尋ねた。
「ねぇ、お母さん。幸恵が帰ってきたの?1ヶ月前から帰ってないから、僕心配だよ。」
「幸恵はね、遠い遠い所へ行ったんだよ。もう戻っては来ないの。」
玄関先で、警察の報告を聞いたお母さんは、子どもの前で泣くのは我慢しようと必死で涙をこらえていた。
また来ます。そう言って、警察が出て行った玄関の扉を閉め、男の子を2階に連れて行き、ベッドに寝かせた。
1階のソファで休んでいたお母さんは、玄関の扉のかぎが開く音にきずき、目を開けた。
「ただいま。今日の仕事もハードだった。」
入ってきた男は、来ていたスーツを脱ぎソファにおいた。
「あなた、お帰りなさい。」
いつもと違う妻の様子に気づいた、男は何があったのか尋ねた。
「幸恵の、幸恵の遺体が発見されたわ。」
男は黙って、妻を抱き寄せた。
「なぜ、なぜあの子なの?何も悪いことはしていないのに、なぜさらわれなきゃいけないのよぉ」
今まで我慢してきた涙が、あふれてきた。
「犯人を見つけような。そんな奴がこの世にいたらまた、誰かがさらわれるかもしれない。」
そう決意した男の目にも、うっすら光る涙があった。
[0回]
PR
http://iioouu.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/6%EF%BC%88%E8%BF%BD%E6%86%B6%EF%BC%896(追憶)